緑ヶ丘霊園は私の住んでいたとこからわりに近く、しょっちゅう行っていました。
ここはかの有名な『さとしくん像』があるところです。
行ったことのある人はお分かりでしょうが、すごくひろい所です。
私のような方向音痴はひとりではとてもいけません。
友達が『さとしくん像』で写真を撮ってくれと言うのでそこへ向かいました。
さとしくんの場所は霊園のなかのある下り坂を下った所のまた広い一画にあるのですが、あまりに人が集まりわるふざけをするので、さとしくんのお墓から像ははずされています。
車を止め、さとしくんまで歩いて行こうとしていると、またもや音楽をガンガンひびかせたガラのわるいお兄さんが乗っていそうな車が何台か来たので、あわてて坂を下ったところの右側の行き止まりの区画に車を移動して彼等がいなくなるのを待っていました。
さとしくんの所もここも、見上げれば崖の下にあることがわかります。
この行き止まりになっている所はコの字形に墓地が広がっていてコの字の線のないところも崖のした、まわりも崖で、車の乗り入れとUターンできるスペースが唯一、出入りできるところなのです。
さて、話はここから大詰めに入ります。
友達が、なかなか帰らないさとしくんのお客さんにしびれを切らして、
「ここで写真を撮ろう!」
と言い出しました。
といっても別に心霊写真を撮ろうというのではなく、単に自分をとるのが好きなのです。
車の前にたち、あんぱんまんのお面をひたいにかぶり、ピースする彼女にカメラをのぞきながら車のライトを背にシャッターを切ろうとした時です。
私の背後から女の人の泣き声が聞こえてきたのです!!
すぐ後ろ、車と私の間から。
それはすすり泣きではなく、泣きながら文句を言っているような、訴えているような、怒っているような声でした。
女の人と喧嘩をしたことがある方ならわかるでしょう。
自分の逃げ足が早いことを私は初めて知りました。
私はこの声が聞こえるとすぐ友達をおいて車に逃げ込んだのです。
友達は私が車に乗ってからもしばらくその場であたりを見回し、きょろきょろしていましたが、
「ねぇ今の何?何だったの、ねぇ?」
と言いながら運転席には戻れず、私のひざに座っていました。
車で5~6分過ごした後、自分たちの聞いた声の確認のため車から降り、
「誰かいますかぁ~」
などと声をかけたりして少しだけ見回りましたが、やはり誰もいませんでした。
当たり前です。
声は私の背後から聞こえたのだし、女が歩いて来るような場所ではないのです。
万が一、歩いてきたのだとしてもしんとしていますから足音ぐらいは聞こえるでしょう。
そして出入り口はひとつなのです。
友達はそちらをずっと見ていたから誰かがくればすぐに分かったはずですし。
やはりあれは霊の声としか思えませんね。
いまだに。
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