誰が名付けたか『オレンジ橋』は鉄の棒の枠組みだけで作ったような、橋と呼ぶにはあまりに簡易な造りだ。
棒が錆びて、オレンジ色になっているからそう呼ばれていると言われる。
この辺りは以前は道として使われていたのだろうが、現在は全く利用する人もなく、ガードレールやトンネルが草に埋もれている。
この橋を利用するのも、山菜取りなどしかないだろうと言われる。
高校生の頃、友人3人で肝試しに行った。
Sさんは語る。
夜中の2時半くらい。懐中電灯だけで辺りを見回すと、ただの草むらしかない。
ただ、トンネルは四角くて角に何か潜んでそうで、電気を当てるのはためらった。
じゃんけんで負けた人間が先頭を歩くこととなり、Sさんは負けてしまった。
「お前ら絶対逃げるなよ。ついてこいよ」
Sさんは後ろの二人を振り返り振り返り、電灯片手に恐る恐る歩いた。
念のため携帯で写真も撮った。
カシャっという音がやけに響いた。
「うわ!」
「ギャー!」
一人が驚くと、お化け屋敷みたいに逃げようとしてしまう。
後ろの一人がこけて、ぬかるみに尻もちをついていた。
泥がべったりついて、友達は半泣きだった。
そのまま、オレンジ橋を歩き、眼下に川が流れているのを見る。
「俺、ズボン洗いたいんだけど。川に降りれるか?」
「あぶねえよ。崖みたいになってるだろうし、川がやべえって話だろ?」
Sさんともう一人の友達は首を振り断った。
その時だった。
「ぴちゃ、ぴちゃ」
と、川から音がした。
魚、いや、誰か川を歩いてる。
懐中電灯を水面に照らす。
誰もいない。
突然後ろで
「ボッ」
と火が付くような音がした。
その瞬間、橋の上で確かに足を握られた感触があった。
動かそうとするが、足首をしっかり握られている。
足を映そうと電灯を下に向けた。
下に大きな目が二つ。
Sさんを見上げていた。
「マジでやべえ、逃げろ!」
後ろの友達が、Sさんの肩をしっかり握り、腕を取った。
すると、今まで握られていた足の感覚がすうっと解けた。
逃げた後に、友達二人から話を聞くとこうだった。
まず、尻もちをついた友達は、歩こうとしたら足を握られたみたいに、前に行けず、バランス崩して尻もちをついたという。
『汚れちまったな……』
と思った瞬間、
「お前は川へ行け」
と耳元で声が聞こえ、絶対行かなきゃいけない気持ちになったという。
橋でSさんが足を掴まれた話をすると、後ろにいた友達も足や肩がひどく重くなり、ものすごく熱くなったそうだ。
「シュボッ」
という音が3人共聞こえていたが、それが何かはわからなかった。
マッチをこすって火を付けるような音だった。
だが、Sさんが見た、足元の二つの目を他の二人は見ていなかった。
後で携帯で撮った写真を見たら、燃えるようなオレンジ色の光しか映ってなかった。
フラッシュが変だったのかとその時は思ったが……。
実はその短いトンネルの中で、老婆が焼身自殺を図ったそうだ。
「お前はここで燃えろ」
その老婆も何らかの指示を受けたのかもしれない。
このトンネルの中で。
そして、その老婆の霊は川や橋を今も散歩しているという。
下手に遊びに行くと、同じ目に遭わされるかも……しれない。
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