本当に怖かった心霊スポット体験談 〜信じる信じないはあなた次第〜

ネットで見つけた心霊スポットの体験談を紹介していきます!

九州/沖縄地方, 熊本県

臼内切(うすねぎり)

熊本県の心霊スポット「臼内切(うすねぎり)」にまつわる怖い話

熊本県の心霊スポット「臼内切(うすねぎり)」にまつわる怖い話

カメラマンのA氏は、十年ほど前まで奥様の実家がある九州地方に暮らしていた。
これは、その頃の話である。
ある春の午後、彼は熊本県の山間部を愛車のジープで走っていた。

「大手印刷所の依頼でね。来年のカレンダーに社長の郷里を使いたいから、自然の風景をいくつかロケハンしてきてくれと頼まれたんだわ」

向こうからの条件は、『民家や鉄塔などの人工物が入りこんでいない事』。

「これがなかなか難題でさ。人家はともかく鉄塔や電柱はよっぽど山の中へ入らないと消えないんだよ。かと言ってあまり山奥だと藪ばっかりになっちゃうしね」

手頃な風景を求め見知らぬ道を闇雲に走る。
気がついた時には、緩やかな丘陵の上に辿り着いていたという。

車から降りて周囲を確かめるなり、『おかしな場所だな』と感じた。
眼下に広がるなだらかな斜面には、昔ながらの農家の屋根がぽつりぽつりと並んでいる。

なのに、この丘のある一帯だけは人のにおいがしない。
農道の轍も、営林署の立て看板も、人の気配をうかがわせるものが一切ない。
その割に、周辺の草は誰かが手入れをしているかのように揃っている。
漠然とした薄気味悪さをおぼえて、車に乗りこんだ。

「んっ」

何度キーをまわしても、エンジンがかからない。
大事な商売道具だから整備は怠っていなかったし、第一故障するような悪路を走行した記憶もない。

不思議に思ったが、動かないものは何ともしようがない。
諦めて、何処かの家に助けを求めようと決めた。

「それで、いちばん近い民家を確認しようと丘の上にのぼったんだよ」

丘のてっぺんから真下を見おろす。
相変わらず人の気配はなく、風に草が擦れあう音がこだましている。

ぼんやりと穏やかな景色を眺めているうち、A氏は妙な事に気がついた。
丘のあちらこちらに、こんもりと土盛りが点在している。




下から観た際には草で隠れて気がつかなかったが、どう考えても自然にできたものとは思えない。
ふと足もとを見れば、自分が立っている場所も土盛りの上だった。

どこかで、こんな土が盛られている光景を見た記憶があるなあ。
思い出を探りながら歩きだそうとした途端、激痛が走った。

まるで、釘でも打ちこまれたかのように足首が動かない。
靭帯を断裂させた事も、踵の骨にひびが入った事もあったが、そのいずれとも異なる痛みだったという。

悶絶しながらその場に転がる。
同時に、かつて目にした土盛りの光景が何であったか思いだして、彼は二重の悲鳴をあげた。

土葬だ。
これは、土饅頭だ。

パニックで呼吸が乱れる。
そこらにあるはずの空気が、肺の奥へとうまく届かない。

このまま、死ぬのか。
激痛と過呼吸で気が遠くなった瞬間、

「えっ」

車の運転席に座っていた。
それから一時間ほど呆然としたのち、彼は車を発進させた。
エンジンは、何の問題もなく一発でかかった。

あの丘はいったい何だったのか。
知りたい欲求と、知ってはいけないという警告めいた予感が交錯するなか、彼はハンドルを握り続けた。

十五分ほど車を走らせて、ようやく農家の家々が現れてきた頃、彼は道ばたで畑作業にいそしむ老齢の女性を発見する。
駄目でもともとだ、聞くだけ聞いてみるか。

「すいません」

車を降りて身分を名乗り、あの丘について訊ねた途端、訛言葉が飛んできた。

「でけんっ」

剣幕に圧されて口を噤んだA氏を、女性が険しい顔で睨む。

「あそこは、ウスネギリの〝穴ひとつ〟ったい。昔、あの奥に隠れ切支丹が住んじょった村があった。ばってん、全員捕まって斬り殺されての。その死んだモンが埋まっとんのが」

あの土盛りったい。
女性の言葉に鳥肌を立てながら、彼は震える声で訊ねた。

「あの奥に……村があったんですか」

行こうという気はなかった。
ただ、驚きのあまりオウム返しに訊いただけだった。

しかし、彼がそこを目指していると思ったのだろう。
老いた女性は、さらに眉間の皺を深くさせて、ぼそ、と呟いた。

「もうせんよ(止めなさい)、死ぬよ」
「……結局、カレンダーの話は社長の気まぐれで流れちゃったんだけどさ。かえって幸運だったかもしれないよ。だって」

間違えて村に入ったらどうなっていたものか。
その時の痛みを思いだしたのか、A氏は長々と息を吐きながら自身の足首をさすった。

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